大人と子どもの”睡眠”は役割が違う!子どもが幸せになる睡眠とは?

2019.07.23

夜に録画したテレビを見たり、ゲームやインターネットでスマホを夜遅くまでいじっていたり、習い事や受験勉強で夜更かししてしまったり……。自分たちの子ども時代と比べて、現代の子どもは「睡眠時間が十分に取れていない」と感じる保護者は少なくないのではないでしょうか。

うちの子はちゃんと睡眠を取れているはず……。そう思っていても、実は正しく眠れていない子どもが急増しているのだとか。さらに、そのような子どもたちは「脳がうまく育っていない」ことが原因で、心身の不調や学力低下、心の問題が起こることがしばしばあるといいます。「子どもの正しい睡眠とは?」「睡眠の整え方とは?」。その疑問に答えてくれる1冊を今回はご紹介します。

子どもの年齢に即した十分な睡眠時間とは

大人と子どもの"睡眠"は役割が違う!子どもが幸せになる睡眠とは?
子どもが幸せになる「正しい睡眠」/成田奈緒子・上岡勇二 著/産業編集センター

本書の著者は、不登校、ひきこもり、発達障害等の親・当事者の支援事業「子育て科学アクシス」代表を務める、小児科医で医学博士の成田奈緒子氏。脳科学の専門家でもある成田氏は、睡眠はどんな人にとっても大切な生活習慣であるものの、大人と子どもでは「睡眠」の役割が違うため、大人は子どもにとっての「正しい睡眠」を理解する必要があると述べています。では、子どもにとっての正しい睡眠とはどのようなものなのでしょうか。

子どもにとっての「正しい睡眠」とは「年齢に合わせた睡眠を十分にとること」「太陽が沈んでいる間は眠ること」そして、この2つが「習慣としてきちんと身についている」ということです。

(本書11ページ)

本書によれば、子どもの理想の睡眠時間は5歳では11時間、10歳で9時間45分、18歳で8時間15分と、年齢が小さいほど長くなります。また、睡眠時間が足りていても、昼夜が逆転していてはNG。

睡眠時間とリズムがしっかり身についていないと、「夜眠らない」「朝起きない」「食欲不振」「病気」「感情のコントロール」「勉強」などに影響するといいます。正しい睡眠ができていないことで、日々の困りごとに繋がってしまっているということなんですね。

子どもの脳の育ち方と睡眠との関係

大人と子どもの"睡眠"は役割が違う!子どもが幸せになる睡眠とは?

すべての生物にとって睡眠「命を守るために必要な生理現象」。人間の大人も子どもにとっても同じですが、子どもの発育にとって特に睡眠が大切である理由は「睡眠が子どもの脳を育てる」ためだと、成田氏はいいます。

”子どもの脳”を本書では「からだの脳(脳幹、間脳、小脳)」、「おりこうさん脳(大脳新皮質)」「こころの脳(主に前頭葉)」と呼び、それぞれの役割は以下のように説明しています。

「からだの脳」は、0~5歳くらいまでに育ち、起きる、寝る、食べる、からだを動かす、感情をつくるなど、生きていくために最低限必要な機能をつかさどっています。

(本書55ページ)

「おりこうさん脳」は、1~18歳までかけて発達し、言葉を獲得する、細かい体の動きを発達させる、知識をため込むという仕事をしています。

(本書58ページ)

「こころの脳」は10歳以降に育ち、「からだの脳」で起こった原始的な喜怒哀楽や衝動などが神経回路で前頭葉に繋がります。そこでそれまでにつくり上げられた「おりこうさん脳」に蓄えられた知識、情報をもとに、与えられた課題を適切に思考。判断する機能をつかさどっています。

(本書60ページ)

これらの“子どもの脳“は、生まれてから約18年かけて育っていきます。その際、大切なのは「からだの脳」、「おりこうさんの脳」「こころの脳」の順番に育っていくこと。最後に育つ「こころの脳」にあるセロトニン神経回路と分泌されるセロトニンによって、感情を安定させ、論理的思考力をアップできると成田氏は解説します。

成長段階ごとの、睡眠の整え方

大人と子どもの"睡眠"は役割が違う!子どもが幸せになる睡眠とは?

また本書には、さまざまな年齢やケース別の睡眠の整え方が紹介されています。その中から、乳幼児期と学童期(小学校高学年)の子どもの睡眠の整え方を紹介しましょう。

乳幼児期の子どもの睡眠の整え方

「夜寝かしつける」よりも「朝きちんと起こす」から始めるのがいいとのこと。朝の目覚めの時間に、子どもの好きな音楽をかけたり、ビデオを見せたり、朝風呂に入ったりすると、自律神経が活発になり目覚めがよくなるそうです。

学童期(小学校高学年)の子どもの睡眠の整え方

小学校高学年になると、学校の宿題だけでなく塾の宿題や受験などで、夜遅くまで勉強しなくてはいけない子どもも多いと思いますが、成田氏は「たとえ勉強であっても夜更かしの言い訳にはなりません。そのことをまずは親がしっかり認識しましょう」と鋭く指摘。学習習慣の前に、まずは生活リズムを整え、自然に朝学習に移行させることを薦めています。夜遅くまで勉強するのではなく、朝早く起きて勉強する習慣をつけることで、睡眠の習慣も整えるわけですね。

この他にも、小学校低学年、中学生、高校生とそれぞれの年齢に合わせた整え方が掲載されていますので、子どもの睡眠に悩む親には参考になります。

「子どもの睡眠」の大切さ

大人と子どもの"睡眠"は役割が違う!子どもが幸せになる睡眠とは?

本書の中でも、特に印象に残ったのが、脳の成長が心や体に与える影響です。子育て中、多くの人が経験するであろう困りごとや悩みごとがの原因が、“よい睡眠を子どもが取れていないために、それぞれの役割をつかさどる脳が育っていないため”かもしれないというのです。

毎朝ぐずるのも、毎晩寝ないのも、「からだの脳」が育っていないから、という可能性があります。

(本書70ページ)

食欲がないのも、便秘なのも、ケガや病気が多いのも、「からだの脳」が育ってないから、という可能性があります。

(本書71ページ)

勉強ができないのは、「おりこうさん脳」が育ってないから、という可能性があります。

(本書72ページ)

すぐにキレたり、心が折れたりするのは、「こころの脳」が育ってないから、という可能性があります。

(本書73ページ)

困りごとの“表面”に目を向けがちですが、「朝は起き、夜は眠るという体内時計を整えられているのか」「体内を常によい状態に保つため自動的にメンテナンスできているのか」「心が安定しているのか」、そしてその根本となる「良質な睡眠と睡眠時間が取れているのか」を、子どもの生活のうちから見つめ直してみることが必要なのかもしれません。

「全力で、大人が子どもの睡眠を整えていきましょう」という言葉も、親の心の深くに響きます。子どもが、この先も人生を快く幸せに過ごしていくためには、今、正しい睡眠を取ることが必要なのです。

本書は「睡眠とは」に始まり、子どもの睡眠について、睡眠の整え方などが、わかりやすく紹介されているだけでなく、実際に成田氏が診察した患者のケースも豊富に掲載され、改善後の様子も参考になります。睡眠に関するQ&Aもありますので、「睡眠について知りたい」という探究心を満たせる1冊となっています。

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