上田玲子先生に聞く!
子どもの食生活の専門家が
教える離乳食の基礎知識(後篇)

2019.05.16

森下仁丹株式会社とNPO法人日本トイレ研究所が共同で、小児栄養学・小児保健学が専門の上田玲子先生に、「離乳食をはじめとした乳児の食事と成長との関係」および「離乳食との上手な付き合い方」についてうかがったお話を前後篇にわたってお届けしています。後篇は乳児期の離乳食と排便の関係、そして気になる食物アレルギーの見極め方や与える食事の注意点をうかがいました。

ママ・パパが便秘体質だと
わが子も便秘に!?

──NPO法人日本トイレ研究所が、1歳から3歳の子どもを持つ母親1500人に対し、子どもの便秘に関するアンケートを実施したところ、「子どもが便秘状態」と回答したのが568人。最も多いのが「0歳」で53.5%、「1歳」が21.4%という結果になりました(詳細はこちら)。離乳食との開始時期と関係があるのでしょうか?

上田:離乳食に切り替える時期は母乳を飲む量、つまり水分量が減るので便秘になりやすいと言われていますが、このアンケート結果を見ると、離乳期に便秘症になり始めたの子どもは30.2%と約3割ですが「6ヵ月未満」が23.3%と多いのが気になりますね…。はっきりとした原因は分かりませんが、この結果から、便秘の発症は離乳食以外の影響も大きいと考えられますね。

1歳を過ぎてから便秘になる理由としては、離乳食が終わり食事の内容が変わってくるからだと考えられます。また、離乳食はお母さんやお父さんなど、信頼できる保育者が口に運んでくれるから安心してしっかり食べるのですが、自分の手で「手づかみ食べ」を行うようになると、食べたことがないものや、繊維が多く食べにくいものは、喉に詰まらせたりするリスクを本能的に察知して食べなくなる場合もあります。それで野菜などを食べなくなり、便秘になってしまうケースがあります。ただし、こうした行動も発達のひとつですから、野菜や肉などは食べやすくゆでたりせん切りにして、野菜たっぷりのお焼きやパンケーキなどに加えるなどメニューを工夫するとよいですね。

──親の体質が、子どもの便秘に関係するのでしょうか?

上田:私の経験上、やはり親子は食生活が似ているので腸内細菌叢(腸内フローラ)も似てくると考えています。親御さんが便秘気味だとお子さんも…という場合も結構あります。親の食事と同じ食材だからとも考えられますが、離乳食の内容に関係なく、便秘になりやすい子もいらっしゃるようです

食材として取り入れるのならヨーグルト(乳酸菌、ビフィズス菌)や納豆(納豆菌)、難消化性の食物繊維であるオリゴ糖を含む食品(甘味料、バナナ、玉ねぎ)、不溶性や水溶性の食物繊維を含む食品(豆類、さつまいもなどのいも類、野菜、きのこ類、オートミール)などを離乳食に取り入れると良いでしょう。一度に食べられる量が少ないためすぐに便秘を解消させるのは難しいかもしれませんが、腸内環境を整えるためにも少しずつで良いので続けていきましょう。ただし、ヨーグルトには加糖のものより、プレーンヨーグルトがおすすめです。

食事だけでは改善しない便秘もあります。その場合は、かかりつけのお医者さまへ早めに相談してください。

「成長するまで与えない」は間違い!
正しい食物アレルギーの見極め方

──食物アレルギーと、食品を与える時期はどのように影響してくるのでしょうか?

上田:食物アレルギーの原因としてよく知られる卵の摂取は、以前はできる限り遅いほうがいいと言われていましたが、最近の研究成果では早く食べさせたほうが食物アレルギーにならないということが分かってきています。

アレルギーを恐れて妊娠中から食べないようにしたり、保育園の先生で「1歳になるまで卵はあげません」という人もいて驚きました。新しい「授乳・離乳の支援ガイド」では、固ゆで卵黄を離乳食(生後5~6か月頃)から与えてよいとしています。

ほかにも、健康法として注目されている穀類を避けるグルテンフリーも、もともとは小麦アレルギーを持つ人のための食事法であって、小麦アレルギーがない場合は普通の食事をとったほうが良いんですよ。ただ、ひとたび自分の子にアレルギー症状が出るのを経験をすると、すごく怖くなりますよね。だからこそ、誤った情報や古い知識に振り回されないようにしたいですね。卵などは避けるのではなく、早い段階で摂取することで、むしろアレルギーの発症リスクは軽減されます。「『食べさせないのではなく、卵は早いうちから少量ずつ食べさせましょう』が、いまの食物アレルギーに対する正しい知識』と伝え続けることが大事と、私は考えています。

──アレルギーに、家族の影響はありますか?

上田:最近見受けられる例ではお母さんやお父さんが花粉症だと、子どもも体質が似て花粉症になりその結果、果物のアレルギーが出てしまうことがありました。例えばりんご果汁が入ったベビーフードで発疹が出てしまい、調べたらりんごアレルギーだったというケースです。果物の場合は、ゼロではありませんが、加熱するとアレルギーを起こしにくいことがわかっています。最初に与えるときは必ず十分加熱してから適温に冷まして与えると安心です。

──ほかに、アレルギーが起きやすい食べ物はありますか?

上田:魚卵ですね。魚卵アレルギーの要因のほとんどがイクラです。「1粒くらいなら大丈夫」と生のまま与えてしまうことが多いためです。またアレルギー以外でも、子どもにとっては窒息の危険が高い食品です。1歳半頃の気管の口径がイクラとほとんど同じサイズで、スポッと気管に入って詰まらせてしまうのです。栄養学的には特に乳幼児に与えたい食品ではありません。面白半分で与えないよう気をつけてください。

──アレルギー症状は、どのように見極めれば良いのでしょうか?

上田:アレルギー症状が最初に現れるのは皮膚です。具体的には「皮膚の湿疹・かゆみ・蕁麻疹」が85%、「目のはれ・かゆみ」が11%、「口のはれ・かゆみ」10%程度です。皮膚症状だけであれば様子を見ますが、「腹痛(8.3%)」「鼻水やくしゃみ(3.7%)」「喘息・呼吸困難(5.6%)」も同時に生じ、急に具合が悪くなった場合にはかかりつけ医に連絡し、必要に応じて救急車を呼ぶなどの対応が必要となります。

また心配があるならば、アレルギー検査をきちんと受け、アレルゲンを特定したほうがいいでしょう。厚生労働省のガイドラインでは、保育所での食物アレルギー対応の原則は、完全除去とされています。つまり、どの食品がアレルゲンか診断で確定していなければ保育所では対応できないということになります。確定診断となるには、血液検査や皮膚検査だけでなく食物除去試験(原因と思われる食物を除去して症状が出なくなるか確認する検査)食物経口負荷試験を行い、慎重に診断をします。

確定診断がないままだと、保育所ではアレルギーの原因となる可能性のある食品をすべて除去しなくてはなりません。そうなってしまうと、乳幼児期の成長に必要な栄養素が摂れなくなってしまいますので、きちんと確定診断を受けるようにしましょう。

──診断をはじめ、病院などに相談して常に正しい情報を取捨選択するのは大事ですね。

上田:そうですね。つい、自分の親をはじめ身近な人の情報だけをうのみにして不安を抱えたり、あるいは多すぎる情報に翻弄されてしまう親御さんは多いと思います。子育てに関する最新情報は日々変化していますので、かかりつけの小児科医など身近な医師のほか、「日本アレルギー研究会」「日本アレルギー学会」のWebサイトなどの情報も参考にしてください。先ほど話したアレルギー検査が受けられるクリニックも、このWebサイトで検索できます。

便秘に関しては前篇でもお話しましたが、離乳食までは親御さんもしっかりケアするのですが、幼児食に切り替える頃には安心して世話がラフになってくる時期です。

この時期は、子どもの発達に伴って「この食べ物はイヤ」という自己主張が出てきたり、大人と同じものを子どもに食べさせてしまいトラブルになったりと、さまざまな要因が重なって生活リズムが乱れやすい時期でもあります。正しい情報を得るだけでなく、離乳食の時期が終わっても子どもの様子をしっかり観察しながら、広い視野で子育てに向き合えると良いですね。

まとめ

  1. 子どもの便秘の原因はさまざま。便秘対策のひとつとして、離乳食にプレーンヨーグルトや納豆、そしてオリゴ糖を含む食品(甘味料、バナナ、玉ねぎ)や食物繊維を多く含む食品(豆類、さつまいもなどのいも類、野菜、きのこ類、オートミール)。
  2. 便秘がなかなか改善しない場合は、早めにかかりつけ医へ相談しましょう。
  3. 卵は、「食べさせない」のではなく、「早いうちから少量ずつ食べさせる」ように心がけましょう。
  4. 果物は加熱してから与えましょう。イクラなどの生の魚卵は与えないようにします。
  5. 食後に皮膚症状だけでなく鼻水や咳などが同時に急速に進んだ場合には、かかりつけ医に連絡し救急対応をします。
  6. アレルギーの最新情報は、身近な医師のほか「日本アレルギー研究会」や「日本アレルギー学会」のWebサイトなどの情報も参照しましょう。

編集後記

前後編にわたって離乳食との付き合い方をはじめ、乳児期における食事と排便やアレルギーの関係をうかがってきました。
悩んだり試行錯誤しているうちに、離乳食期はあっという間に過ぎてしまいます。正しい情報を選び取ることはもちろん、食事の取り方やウンチの様子などを日々しっかり見てあげながら早めにケアを。親子で楽しい離乳食期を過ごしましょう。

生活のリズムということでは「早寝早起き朝ごはん」の大切さについて、お話をされていますね。

「早く寝てもらうためには、早く起きて親子で朝日を浴びましょう。そうするとホルモンの働きで14時間後には眠気を感じるようになります。朝日を浴びて脳を目覚めさせ、朝ごはんで体を目覚めさせ、夜は早く眠くなるといった生活リズムが健全な成長につながります。また、保護者の方々は子育ての時期は忙しく睡眠不足になりがちです。お母さんお父さんも時間に余裕を持っていただき、この時期をより楽しんでもらえると最高ですね。」

離乳食と並んで、親として気になる「子どもの睡眠」。次回は、瀬川記念小児神経学クリニック 理事長の星野恭子先生に、この疑問についてうかがいます。

取材協力

author image

上田玲子先生

帝京科学大学教育人間科学部幼児保育学科教授・学科長。小児栄養学、小児保健学が専門。乳幼児の食生活や食行動、栄養に関する多くの著書を執筆。『はじめての離乳食』(主婦の友社)ほか。

pagetop