その”腸活”間違ってない?
腸内細菌の基礎知識を
知っておこう!

2019.01.11

腸内環境を整えて健康や美しさを手に入れる“腸活”という言葉も耳慣れてきた今日このごろ。腸への働きかけが注目されているのは、なぜでしょうか。

腸には、胃で消化された栄養素を最終的に分解して吸収する「小腸」と水分を吸収して便を作る「大腸」からなります。口から摂取した食べ物や飲み物は、腸で吸収されて初めて栄養素として体に取り入れられます。「腸」は生命の維持に大切な役割を果たす器官の1つであり、腸が大切な理由はここにあります。

さらに腸内に存在する何種類もの細菌が健康に大きな作用を及ぼすとされ、その腸内細菌のバランスを整えるために“腸活”が大切だと考えられているのです。

妊娠時に起こりがちな便秘の対策だけでなく、妊娠前後の体調管理にも関わってくる“腸活“。“腸活“の方法を見極めるために知っておきたい、腸内細菌とそのバランスについての知識を紹介していきます。

体内の細菌の数は数百兆個!総重量はなんと…?

腸内フローラ

私たちは体内にいるたくさんの細菌やウイルスと共生しています。腸以外にも皮膚や口の中などに細菌がおり、その種類は数百兆個、重さにすると1〜2kgにもなるといわれています。

そのうち腸内に生息する「腸内細菌」は、バクテロイデス属、連鎖球菌、ビフィズス菌、腸球菌、大腸菌など100種100兆個にもおよびます。腸の中ではそれらの細菌がグループでまとまっており、その様子がまるでさまざまな種類の花々が群生している花畑(フローラ)のように、見えることから「腸内フローラ(腸内細菌叢:ちょうないさいきんそう)」と呼ばれています。

この腸内フローラでは、一定のバランスを保ちながら細菌が共存し、助け合う一方で、生存競争が行われています。その結果として、個々に最も適した腸内細菌のタイプが腸内に生き残るため、人によって理想的な腸内フローラの構成も異なります。

つまり、腸内フローラの最適なバランスは人それぞれということなのです。また、腸内の健康や免疫力などを保つ役割を担う菌だけ増やせばいいというわけではなく、有害物質などを生み出す菌、さらには腸内細菌のバランスが崩れると有害物質を生み出す菌に“加勢”する菌のそれぞれを、その人の体に合ったバランスに保つことが重要になります。

バランス変化の要因を知っておこう

バランス変化

それでは、腸内フローラのバランスは、どのような理由で変化するのでしょうか? その要因のひとつは「加齢」です。生まれたばかりの赤ちゃんの腸内は無菌状態ですが、生後3日目ごろから腸内細菌が定着して増殖し、年齢の変化とともにそのバランスも変化していきます。

また、日々口にする食事の内容によっても変化します。プロバイオティクスによって腸内環境を改善できるのは、整腸作用をもたらす生きた微生物を体内に取り入れることで、腸内細菌のバランスが変わるからです。プロバイオティクスを含んだ食品を摂取すると、継続的に腸内フローラのコントロールにもつながります。この外には、抗生物質など抗菌性の薬を服用した時にも変化します。

もし腸内細菌のバランスが崩れたら…「便移植」という治療法も!?

便移植

体の免疫システムの70%近くは腸管にあることから、腸内フローラは免疫系の正常な発達や調節に影響を与えるとも考えられています。腸内細菌のバランスが崩れると腸管の不調だけではなく、全身の不調や病気にも影響を与えます。腸内フローラが、肥満やメタボリックシンドロームに影響するという研究結果も発表されているのです。

崩れてしまったバランスを整える方法として「便移植」という治療法の研究が行われています。「便移植」とは健康な人の便に含まれる腸内細菌を、腸内フローラのバランスが崩れた人の消化器官に移植し、有用な細菌の構成割合を高めることで治療効果を得るという移植術です。

腸内フローラのバランスが一度崩れてしまうと、大腸の奥側(小腸から遠い側)になるほど、抗生物質などの抗菌薬が効かない有害な細菌が増えて感染症などにかかりやすくなってしまいます。その治療として便の細菌を移植するわけですが、前述のように腸内フローラのバランスの崩れが、さまざまな不調をもたらす要因にもなっていると考えられているため、それらの不調を改善させるものとして注目を集めているのです。

便移植治療の有効性が証明されているのは、まだ一部の感染症のみですが、国内の大学病院でも臨床試験が行われており、まさに今研究が進められている分野です。

このように、腸内バランスの崩れは不調や病気を招く可能性もあります。そのため、バランスを整えることが「健康」になるための1つのキーワードとなりますが「腸内の最適なバランス」は、個々人によって異なります。毎日の食生活を見つめ「自分の調子のよい状態」を知り、上手に腸活をしながらその状態を保っていきたいものですね。

【参考文献】
「腸内細菌」(『マイペディア』『世界大百科事典』平凡社)
「腸内フローラ』(『日本大百科全書』小学館、『イミダス』集英社)
「便微生物移植」(『日本大百科全書』小学館)
平山和宏「腸内細菌叢の基礎」(『モダンメディア 60巻 第10号』 栄研化学株式会社 2014年10月)

関連記事
recommend
pagetop