どうして妊婦は
便秘になりやすいの?
腸が受ける「2つの影響」を知ろう

2018.12.13

多くの妊婦さんが抱える悩みの一つが「便秘」です。「妊産婦の便秘と対処法に関する実態」という研究論文での調査では、妊娠中に「看護上問題視すべき便秘として判断される」人の割合は、調査対象者の36.5%だったというデータがあります。また同じ調査では妊娠前後の期間と比較すると、やや高い割合になっているとも報告されています。

それまでお通じの悩みが無かった人でも体の変化とともに便秘がちになったり、元々お悩みを抱えていた人はさらにつらい便秘に悩むケースも…。その原因には、妊娠によって腸が受ける2つの影響があります。その理由を見ていきましょう。

ホルモンの影響で、腸の動きが鈍くなる

妊娠による女性の体の変化の要因は、女性ホルモンによるもの。受精卵を着床しやすくしたり、着床後の胎児の体を守ったり、胎児へ栄養を与えたりできるように準備を行います。女性ホルモンの一つ、排卵後の黄体期に分泌量が増える「プロゲステロン(黄体ホルモン)」は、妊娠を成立させるために女性の体にさまざまな変化をもたらしますが、「水分を体にためこみやすくする」という作用もあります。生理前に体がむくんでしまうのも同じ理由なのです。

さらにプロゲステロンには、「腸のぜん動運動を鈍くする」作用もあります。腸の動きが鈍くなると腸内に便が滞留する時間は長くなり、便の水分が少なくなってしまいます。その結果、便が硬くなったり、なかなか排せつできずに便秘が続きやすい状態になってしまうのです。

容積が2000倍以上になる子宮で圧迫される

子宮の容積は、未産婦が2~3ミリリットルなのに対して、妊娠末期には4000~5000ミリリットルと、実に2000倍近くにも増大します。子宮は直腸と接しているため、子宮が大きくなるにつれて直腸を背中側へ圧迫してしまいます。小腸と大腸も、下から上へと押し上げられるように圧迫されていきます。胎児が成長するにつれて圧迫の度合いは増します。すると、腸の動きが鈍くなり血流も滞りがちになってしまいます。血流量が下がると水分代謝にも影響を与え、結果として便秘が起こりやすくなるのです。

でも「容積が2000倍以上」と言われても、いまいちピンと来ませんよね。シカゴ科学産業博物館(Museum of Science and Industry, Chicago)では、この子宮が拡大する様子をビジュアル化したコンテンツを公開しています。動画で見れば、約2000倍の容積になるとどのくらい腸を圧迫するのかがまさに一目瞭然です。

妊娠9週目ごろから母親の子宮に羊水がたまり始め、おなかの膨らみが外からも分かるようになります。子宮が大きくなるにつれて胎盤と胎児も成長し、出産直前まで大きくなり続けている様子がわかりますね。こちらのページでは、画面左下のレバーを操作できます。妊娠周数と子宮の大きさとの関係がより詳しく理解できます。

女性ホルモンによる体の変化、そして子宮による腸の圧迫。どちらも避けられないもの。妊娠の前から腸の調子を整えておき、「快腸」な状態を保てるように心がけましょう。

 

【参考文献】
高井郁美・米田昌代 「妊産婦の便秘と対処法に関する実態」(『石川看護雑誌 第11巻』 2014年3月)
「黄体期」(『デジタル大辞泉』小学館)
金子 周司 編『薬理学』(化学同人、2008年)
田中宏和「妊婦の生理学」(『日本臨床麻酔学会誌38巻 4号』日本臨床麻酔学会、2018年4月)
「子宮」(『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館)

pagetop