《医師取材》急速に注目される「DOHaD」。赤ちゃんの健康のためには生活習慣や食事の見直しが大事!

2018.04.05

今、注目されつつある「DOHaD(ドーハッド)」は、胎児の頃の栄養状態がその後の体質や健康リスクに影響を及ぼすという概念。

まだまだ一般的には認知されていない言葉ですが、低栄養状態で発育が進むと、代謝異常を引き起こしたり、様々な疾患のリスクが高まったりすることが、近年の研究でわかってきています。

では、元気で健康リスクの少ない赤ちゃんを産むために、私たちは何をすればいいのでしょうか?

前回はDOHaDの基本的な概念や、疾患リスク、また現代女性に足りない栄養素についてご紹介しましたが、今回はより具体的に生活を改善させるポイントを教えていただきました。お話を伺ったのは、前回に引き続き『佐藤病院(群馬県高崎市)』の産婦人科医、佐藤雄一先生です。20180405_2_2

健康の基本は3食きちんと良いものを食べること!

健康な体づくり、そして赤ちゃんを授かるために生活を変える。その基本は栄養不足を解消させること。佐藤先生は「まずは栄養のあるものを3食しっかり食べ、しっかり規定カロリーを摂取しましょう!」と話します。

「現代女性は、とにかく摂取カロリーが足りていない人が多いんです。その原因のひとつには、働く女性の朝食欠食率(=朝ごはんを食べない人の割合)の高さが挙げられます。働く女性はとにかく忙しい生活を送っています。夜遅くまで働き、クタクタになって帰宅してから食事をして急いで寝ると、どうしても朝の目覚めが悪くなって朝食を抜いてしまいがちです。日本の女性の摂取カロリーは、もともと1日1600キロカロリーほどと少ないもの。さらに1食抜くと、摂取カロリーはさらに500キロカロリーも少なくなってしまいますから、朝食は重要です」(佐藤先生)

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なんとなく朝は忙しかったり眠かったりして朝食をおろそかにしがちですが、カロリーという数値で表されると、大切さが分かってきます。他にも、朝食を抜くデメリットはまだまだあるとか……。

「朝食は英語で『BREAKFAST』といいますよね。BREAKは『壊す』、FASTは『断食』という意味。BREAKFASTには、断食状態を破るという意味が含まれています。朝食は、エネルギーを補充し脳を活性化したり、体温を高めることで生活リズムを整えます。朝食を抜くとこの働きができないだけでなく、長時間にわたって空腹状態が続いたあとの食事によって、血糖値が急激に上昇し、血管を傷つけるリスクが高まります。血糖値の観点からも、起床後の食事は大切なんです」
最近、「健康のためには1日1食」、「カラダを若干飢餓状態にしておくと長生きできる」という話を耳にすることがありますが、健康なカラダづくりや妊娠・出産の観点からは誤り。

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「アンチエイジングや長生きという観点では、カラダを若干の飢餓状態にして、食事を減らすことが、必ずしも悪いとは言えません。でも、妊娠を考える女性にとってはNG。妊娠や出産のためには、きちんとした食事を3食しっかりととって、十分な栄養を摂取することが欠かせません」(佐藤先生)

では、妊娠を考えて健康なカラダを手に入れるためには、いつから食生活を改善していけばいいのでしょうか?

「食生活の改善による体質の変化は、だいたい3ヶ月後から半年後にあらわれてきます。『子どもがほしい』と思ってから食生活を変えても、遅いと言えるでしょう。将来の妊娠・出産のためはもちろん、自身の健康のためにも、今から栄養満点の食事を摂るようにしてくださいね」(佐藤先生)

料理を習慣にしつつ、足りない場合はサプリメントで!

3食しっかり食べることが大切だと言う佐藤先生。しかし、ただ朝・昼・晩に「何かを食べる」だけでは十分ではありません。その内容が大切です。

「ある調査によると、自宅で料理をする習慣のある人の方が、習慣のない人よりも栄養状態が総じて良いという結果が出ています。外食ばかりだと、野菜不足になったり味の濃いものばかり食べたりすることで、ナトリウム過多になりがちです。また自炊をすると、自然と旬の物を食べる習慣がついていきます。旬のものは栄養価が高いもの。自炊をする習慣を身につけると、栄養面では良いことがたくさんあると言えますね。一汁三菜は難しくても、まずはお味噌汁だけでも自分で作ってみてください」(佐藤先生)

現代人はすぐにサプリメントや栄養ドリンクなどで足りない栄養素を補おうとする傾向がありますが、これについてもポイントがいくつかあると佐藤先生は言います。

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「足りない栄養素をサプリメントで補うことは、悪いことではありません。ただし、サプリメントにもオススメできるものとそうでないものがあります。たとえば、サプリメントの中でも、添加物をあまり使っていないものや自然由来の成分を使ったものの方が安心です。サプリメントを選ぶときは、原材料に注目してみてください」(佐藤先生)

旬のものをいただきながら健康の基盤を作り、足りないものはサプリメントで補う。現代女性の健康管理の入り口は、実はシンプルなのかもしれません。

小さい赤ちゃんには小さい赤ちゃんの育て方がある

生まれてくる赤ちゃんのためはもちろん、自身の健康のためにもしっかりと栄養を摂ることが必要であることはわかりました。とはいえ、それでも赤ちゃんが低出生体重児で生まれてくる可能性はあるもの。子どもが低出生体重児だった場合、注意すべきことはあるのでしょうか?

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「低出生体重児だからといって必ずしも病気になるわけではありません。自分の子どもが小さいからといって、あまり悩む必要はないですよ。ただ、注意すべきポイントがひとつだけあります」(佐藤先生)

昔は「小さく生まれたら、たくさん食べさせて大きく育てればいい」という考え方がありましたが、これこそが佐藤先生の言う「注意すべきポイント」なのだそう。

「小さい子を大きくしようとしてたくさん食べさせると、栄養過多を引き起こして小児肥満になってしまいます。赤ちゃんのときに他の子より小さくても、10~14歳ごろの第二次性徴期までに、その差はなくなっていきますから心配ありません。小さいなら小さいなりに育てればいい。私たちはお母さんにはそう声をかけています」(佐藤先生)

お母さんは、生まれた子の発育状態に敏感になるものですが、佐藤先生は「大きさも、子どものひとつの個性だと思って焦らないでほしい」と言います。一生関わっていくカラダと健康。現在のライフステージに合わせ、食事や生活習慣を見直し、健やかなカラダと未来を見つけていきたいですね!

【今回の勉強・実践ポイント】
・妊娠を考える女性は摂取カロリーと栄養面を意識して3食食べよう
・まずは汁物だけでも自炊し、旬のものを取り入れる習慣を
・もし低体重児が生まれても焦らないで!その子なりに育てればOK

この記事を取材協力・監修してくれた方

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佐藤雄一

産科婦人科舘出張 佐藤病院
産婦人科医 医学博士。「産科婦人科舘出張 佐藤病院」院長。不妊治療専門施設「高崎ARTクリニック」理事。女性の生涯にわたる心身の健康を支援していくことをライフワークと考え、予防医学の観点からNPO法人ラサーナの理事として、女性のQOLの向上、子宮頸がん、乳がんの撲滅に向けた活動にも力を入れている。著書に『今日から始めるプレコンセプションケア』(ウィズメディカル社)がある。
▼産科婦人科舘出張 佐藤病院
http://www.sato-hospital.gr.jp/
▼高崎ARTクリニック
http://www.takasakiartclinic.jp/

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